ホーホケキョとなりの山田くんの、ここが見どころ

ジブリ映画の中でも最も異色作と言えるのが、『ホーホケキョとなりの山田くん』でしょう。いしいひさいちの新聞4コマ漫画を原作とした本作は明確なストーリーと言えるものは無く、ごく平凡な家族である山田家の日常を淡々とつづっていきます。一見すると地味な印象ですが、高畑勲監督は原作漫画の独特な間を表現するために細心の演出と画面構成を駆使しました。ジブリ映画としては初めてセル画を使わずデジタルで制作されましたが、デジタル彩色でありながら水彩画や水墨画のような淡いタッチで描かれています。この手描きイラストがそのまま動いているような画面を実現するために、実に通常の3倍の17万枚もの作画枚数が費やされました。そのため制作費が大幅にオーバーしてしまったと言われています。それだけのエネルギーが費やされているにも関わらず、画面上は実にさりげなく何気ない話をしているという落差も、本作の大きな見どころと言えるでしょう。また朝岡雪路や益岡徹ら声優陣の名演や、矢野顕子の音楽など音響面でも聞きどころが多いです。しかし本作の最大の魅力は、ほんわかとした雰囲気にあるでしょう。登場人物たちは主役の山田家の人々をはじめとして、いい加減で間が抜けている人たちばかりですが、どこか憎めません。映画の中で「適当」という言葉が出てきますが、まさしくその適当なゆるい雰囲気が、ストレス社会に疲れた現代人の心に染み入ってきます。何度も見返したくなる名作です。

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